2010年07月14日

法人税引き下げ、空洞化で実効性に疑問も

7月12日エントリーの「参院選の結果で(2)」で、法人税減税が国際競争力強化のためという論立てのいい加減さを、ロイターアンケートが図らずもあぶりだしたことを書いたが、今日またロイターの記事が伝えていることについて考えてみたい。

そのニュース記事はこれだ。「法人税引き下げに期待する市場、空洞化で実効性に疑問も」

 「第一生命経済研究所の試算によると、法人税引き下げは経済成長に有効との分析を示している。」と言い、 
 「金融市場からは「経済成長の要因はどうしても企業サイドから来るため、グローバル競争時代にあるべき法人税の水準を考えれば、法人税の引き下げは必須」(三菱東京UFJ銀行・企画部経済調査室長の内田和人氏)とか、
 「中長期的にみれば株主に対する還元、所得環境の向上につながり、内需を押し上げる」(米系投信の運用担当者)と。

 しかし、その直ぐ後で、こう白状している。
 「その効果の規模は現時点では未知数ながら、生産、雇用、消費の循環の起点である生産に直結する設備投資の拡大には、法人税の引き下げが必須との主張が複数出ている。第一生命経済研究所・主席エコノミストの永濱利廣氏は「税率を下げるという単純な事実よりも、日本が本格的な成長戦略に舵を切ったというアナウンス的な効果がある」とも指摘している。」

 効果が測定不能なことを、一般企業は取り組むだろうか。そんなことを政治に求めるとは、なんと厚かましいのだろう。アナウンス効果というのは、将来の見返りが期待できる場合に取り組まれる。見返りがあるのかないのか測定不能なことに、事業家は取り組むだろうか。

 一つはっきりしているのは、このようなことを言っているのが、銀行、生保、米系投信という点だ。彼らにしてみれば、企業の法人税が減税されて膨らんだキャッシュが、自分たち銀行、生保、投信などに預入られれば、それが自分たちの儲けになるから、ここは勢い声を大にしてでも、法人税減税の「メリット」を叫ばなければならない。

 だが、メリットは、かれらにあっても、庶民には決して無いことは、12日のエントリーでも紹介したところだ。そのことを、もっと分かりやすく読ませてくれる記事が、今日のロイター記事だが、昨日13日のビッグニュースである「新型マーチ100万円切る タイに生産移管」と絡めて考えれば、自ずから明らかではないだろうか。

 そのロイター記事のミソは、これだ。
 ただ、期待成長率が高まらないまま法人税を減税しても、日本企業による国内での設備投資は低迷し、成長率や販路先で、より将来性のある新興国など海外に流出するという空洞化懸念は消えない。「大企業のみならず中小企業においても、海外に企業活動の軸足を移そうとする動きが強まっており、法人税率を引き下げれば空洞化を止められるといった筋合いの話ではない」(みずほ証券・チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏)との指摘もある。

 7月のロイター企業調査でも、法人税減税で増えたキャッシュフローは「設備投資・研究開発」「内部留保の積み上げ」「海外での事業展開」に回りやすく、雇用・所得環境には好影響を及ぼしづらいことがわかっている。対内直接投資についても、法人税率を現行水準から仮に10%ポイント引き下げ、30%前後としても、先進国平均やアジア諸国と比べると高い水準にとどまるため、増加するとは言いきれない。
 これって、先ほどの「新型マーチ100万円切る タイに生産移管」ニュースを念頭に置いて読めば、より一層、「なるほどなあ」と、なるはずだ。

 ロイターの今日の記事全文は、こちらだ。
法人税引き下げに期待する市場、空洞化で実効性に疑問も

 [東京 14日 ロイター] 参院選での民主党大敗を受け、金融市場には自民党やみんなの党も支持している法人税引き下げの実現に期待感が高まっている。

 実施できれば企業の競争力向上に結びつき、景気拡大にもつながる材料になるとみられているが、産業空洞化の進む中でどこまで実効性があるかと言う懸念の声も出ている。政策実行に大きな障害と言われている「ねじれ国会」の出現にマーケットのいら立ちは次第に高まりつつある。

 クレディ・アグリコル証券・チーフエコノミストの加藤進氏は、与党の参院選敗北を受けて、菅直人政権の経済政策が民主党、自民党、みんなの党の考えを折衷した形になると見込む。「民主党と自民党が一致している法人所得税減税や、みんなの党が主張する公務員改革などを優先せざるを得ない」と指摘する。参院選の結果、国会は参院で与野党勢力が逆転する「ねじれ状態」となり、政策実現には野党の協力が不可欠になる。市場関係者の間では、法人税については民主党が参院選マニフェストに引き下げを明記し、自民党や公明党、みんなの党など野党の多くも同様の主張をしていることから、歩み寄る余地があるとみられている。

 市場が法人税引き下げに注目するのは、日本企業の国際競争力が相対的に低下傾向にあるとの見方が背景にあるためだ。例えば、アジア諸国で法人税率を戦略的に引き下げる動きが相次ぎ、負担の格差が日本企業の投資競争力の低下に直結すると懸念されている。

 税率引き下げは、企業の収益力改善で経済成長にプラスに働くという予想が出ている。第一生命経済研究所の試算によると、法人税率を現行の40%程度の水準から10%ポイント引き下げた場合、企業のキャッシュフロー増加や資本コスト低下により、減税10年目の設備投資拡大効果は乗数効果を含め4.86兆円に達するという。また、経済産業省によると、EU(欧州連合)15カ国でこの10年間で表面実行税率を引き下げた結果、GDPに占める法人税収のウエートは増加傾向で、表面実行税率が平均よりも低い国の実質GDPの伸び率は高い国よりも約1%程度高いとし、法人税引き下げは経済成長に有効との分析を示している。

 金融市場からは「経済成長の要因はどうしても企業サイドから来るため、グローバル競争時代にあるべき法人税の水準を考えれば、法人税の引き下げは必須」(三菱東京UFJ銀行・企画部経済調査室長の内田和人氏)、「中長期的にみれば株主に対する還元、所得環境の向上につながり、内需を押し上げる」(米系投信の運用担当者)──など、その効果の規模は現時点では未知数ながら、生産、雇用、消費の循環の起点である生産に直結する設備投資の拡大には、法人税の引き下げが必須との主張が複数出ている。第一生命経済研究所・主席エコノミストの永濱利廣氏は「税率を下げるという単純な事実よりも、日本が本格的な成長戦略に舵を切ったというアナウンス的な効果がある」とも指摘している。

 ただ、期待成長率が高まらないまま法人税を減税しても、日本企業による国内での設備投資は低迷し、成長率や販路先で、より将来性のある新興国など海外に流出するという空洞化懸念は消えない。「大企業のみならず中小企業においても、海外に企業活動の軸足を移そうとする動きが強まっており、法人税率を引き下げれば空洞化を止められるといった筋合いの話ではない」(みずほ証券・チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏)との指摘もある。

 7月のロイター企業調査でも、法人税減税で増えたキャッシュフローは「設備投資・研究開発」「内部留保の積み上げ」「海外での事業展開」に回りやすく、雇用・所得環境には好影響を及ぼしづらいことがわかっている。対内直接投資についても、法人税率を現行水準から仮に10%ポイント引き下げ、30%前後としても、先進国平均やアジア諸国と比べると高い水準にとどまるため、増加するとは言いきれない。

 厳しい財政状況の中で、法人税引き下げ分の財源捻出をどうするかとの根本的な問題に加え、今後の政局の展開によっては政策議論不在の2011年度予算編成にもなりかねず、現段階では税制改革の議論自体の行方も不透明だ。
  参院選が終わって、これから本格的に「消費税増税と法人税減税」キャンペーンが張られるだろう。新聞、ラジオ、テレビ、ネットなどで。そのときに、上に紹介している、みずほ証券・チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏の話などは、ひょっとしたらかき消されてしまうかもしれない。

 だが、こういう視点、指摘は、忘れてはならないし、どんどん展開して行かなければならないと思う。

 
 
 
posted by flyhigh28 at 21:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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